ねえねえちょっと

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【映画】ヒメアノ〜ル感想

主演は天才・森田剛
平日の夕方に観に行きました。そんな時間帯だということもあり、館内は私一人、、!
怖い怖いと前評判を聞いていたのにたった一人で暗い中で耐えられるかしら!?とドキドキしながらセンターを陣取り99分のめり込んで観てきました。
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わたしは原作未読なので、この感想はあくまで映画版ヒメアノ〜ルを観てわたしが感じた気持ちを書いていきます。



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序盤は安藤先輩(ムロツヨシ)の気持ち悪さにゾクゾクしつつ、しかし笑えるなと思ってゆるーく観ておりました。しかしムロツヨシの存在感はすごい。岡田くんがユカちゃん(佐津川愛美)に告白されてる所を見た時の絶叫、そして、もう二度と恋はしないヘアー(笑)はムロツヨシでなければ出すことのできない狂気を感じました、、!
ユカちゃんは少女漫画に出てくるようなまさに天使ちゃんだった!同性には間違いなく嫌われ、、(しー!)るだろうなぁとは思ったけど。
純情そうに見えて、実は計算高いというか。小悪魔感全開!
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さて。岡田くん(濱田岳)について。
あのはっきりしない態度というか物言いがなんとも。。
序盤は可愛らしい今時の子だなと思いながら観ていたが、終盤になるにつれ岡田くんのような人間が一番酷いよなと、、。
自分に被害が及ばないように生きることが一番っていうのは、あんな壮絶ないじめがあるような学校にいたらそうなっちゃうのは仕方ないと思う。
今時の若い子(もちろんわたしだって)はそうやって自分を守って生きていかないと、ふとしたきっかけでいじめられる子の対象が自分になることをわかっているから。そしてそうやって身を守りながら大人になってしまったから。明日は我が身よ。だから岡田くんを責めることが出来ないのはすっっごくわかる。誰だっていじめられないように他人を生贄にして生きてる。でもそんな今時当たり前の生き方が一人の人の人生を狂わせてしまうのだとしたら、、ゾッとする。学生時代からそうやって生きるクセを身に着けてしまった我々人間のなんと恐ろしいことか。人間ってものすごく酷くて救いようのない存在なのかも。




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ブコメのようにスタートしたものだからすっかりタイトルが出てないことを忘れておりました。
岡田くんとユカちゃんがお部屋で致しているときに窓の外、数m先には森田(森田剛)が、、
このときの森田の目は本当にやばかった!
とにかく暗くて。穴の底の底の底を見せられてるみたいな暗さ。暗すぎて何も感じ取れない。絶望なのか殺意なのか。それかなにも見てないのか。安藤先輩に感じたのとはレベルの違いすぎるゾクっとでした。
そこで初めてタイトルが。
一気に違う映画を見に来たような感覚になりました。映画の色というのか、そのものが真っ黒になってしまったみたいな。。
タイトルのかすれた英語、素敵でした!
そのときのサントラが!たまらなく素晴らしかったのですが発売はされないようですね、、。残念です。
タイトルが出た瞬間、「カチッ」とスイッチを切り替えたような音が聞こえた気がしました。
これから見るものは覚悟しなきゃいけないものなんだと。背筋が伸びました。でもとても格好いいと思ってしまいました(笑)
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最初に森田くん(天才・森田剛)と岡田くんがカフェで再会した時の森田くんの声はとても穏やかに聞こえました。あれ?アイドル森田剛?と思ってしまうほどには(笑)そこから段々と声が変化していく所も見応えありですね!
殺害のシーンはそこまで怖くなかったのですが、リアルな感じだなぁと思いました。徐々に刺していくところや、拳銃で口の横を撃ちぬくところ痛々しかったです。
そして女性の殺され方についてはゾッとするばかり。




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しかし私が一番恐怖を感じたのは、簡単に家の中に侵入されてしまうことや、後をつけられ殺されるというところ。夜道歩けなくなりました(笑)
笑い事ではありません。。事実森田は無関係な人を殺していたから。
ふと、安全なはずの家にいるのに窓の外に森田が立っているような気がしてしまう。家に帰ってリビングに行けば森田が勝手にご飯食べてて、その後で殺されるかもしれない。鍵なんて意味がない。誰でもいいんです。この時代どこででも起こりそうな事件ですよね。これは映画の中の話じゃない、自分も経験するかもしれないことだ、そう思ったら落ち着かなくなります。眠れなくなります。
残虐な殺害シーンも怖いですが、こういう、現実に自らの身に起こりうる可能性のある恐怖を見せられたので余計に恐怖を身近に感じてしまいます。誰でも被害者になる可能性があるんですもの。そしてここまで恐怖を感じるのは森田剛の演技力が素晴らしいからだとも思います。ほんとうに、どこにでもいそうなんです、森田。
この時代、誰でも森田になる可能性があるし、その逆で誰でも森田のような存在を生み出す可能性がある。
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森田は平気で嘘をつきます。平気で人を殺します。
息をするみたいに。それが当たり前みたいに。
全く見知らぬ人の家に入り、人を殺しそのあと普通に食事をするんです、見知らぬ家で。
なんてことでしょう。
残虐で最低な森田。しかし学生時代に壮絶ないじめを経験し、人間の尊厳を奪われてしまった彼がこうなってしまったのは責められない気もしてしまう。もちろん許されることでないけれど。
きっと何度も何度も絶望を感じてきたんでしょうね。身を守るために嘘をついて、それが嘘だと感じなくなり、本当の自分をどこかに置き忘れて、ぐちゃぐちゃな感情に振り回され、平気で人を殺し犯す。嗚呼。





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学生時代、岡田くんに騙され川島(いじめっ子)に呼び出されるがまま学校へ行った森田。
そこでクラスメイトの前でオナニーをさせられてる時の森田の目が、、、。私泣きました。
すごい目でした。映画タイトルが出る直前の森田の目も恐ろしかったが、ここでの目も、表情もものすごく暗い闇でした。絶望なのか、麻痺して何も感じていないのか、、。とにかく深い深い闇で、、。何も文句も言わず命令されるがままオナニーを続ける森田が本当にかわいそうで。世界中に彼だけがひとり取り残されてしまっているように感じて。あぁ、もうダメだ。もう許してあげて。誰か彼を助けてあげて。都合良くはいかないってわかってるけど。
森田がいじめっ子川島を殺してしまった時にはもう、彼は感情の全てに蓋をしてしまった後で、別人になってしまってたんだろうなぁ。





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森田の壮絶な過去を思うと、殺人鬼になってしまったのも仕方ないと思ってしまう。。
もちろん、絶対に許されることではないけれど。
どんな思いで生きてきたのだろう。
最後、車で警察から逃げている時に白い犬を轢かなかった森田。人の頭は平気で轢いたのに。お家で飼ってた犬に似ていたからなのか。
片足を失いながらも、最後に思い出したのは自分を裏切った岡田くんとの楽しかった思い出。。。
いきなり人が変わったように岡田くんに話しかける森田。借りてたゲームを探し始め、母親に麦茶を頼む。楽しかったあの日の再現。そうか、そこを思い出すのか。
警察に掴まりながらもとってもいい笑顔でまた遊びに来て、と岡田くんに話しかける森田は、殺人鬼なんかじゃなかった。
今までの恐ろしいほどの凶悪なイメージから一転、ふつうの青年の表情、そして優しそうな声。
白い犬が引き金となったのか。
最後の最後で、本来の森田が戻ってきた。 
森田は今まで自分がしてきた事を覚えている状態であの頃の森田に戻ったんだろうか?
そうだとしたらやりきれない。
もういっそ、今までのこと全部忘れてあの頃の森田に戻っていてくれたほうが、、。ツラかったこと、苦しかったこと人間として生きてこなかったこと、全部忘れていい思い出だけ残して捕まったほうが、、。いやしかし。。
このシーンに関してはなにが森田にとって一番いい答えなのか分かりません。岡田くんとの思い出を思い出したことも切ないし。でも、最後の最後で優しい、明るい色の思い出が記憶に出てきたのなら最後の瞬間は人間として生きれたのだろうか、なんて思います。一人の人間の人生の全てを見せられたような気がしました。岡田くんには、森田が最後に思い出したのが自分との思い出だってこと、もっと重く受け止めてほしい。きっとそれだけあなたは彼にとって必要な人だったのよ。





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最後のシーン。学生時代の岡田くんと森田。音声のみのところ。
緊張したように岡田くんと話している森田はすごく優しい声。少し舌っ足らずな喋り方で、内気で心優しい少年だろうなと連想させる。とても嬉しそうに喋っている声からはほんとに、ほんとに優しい少年なんだろうなと。。だからこそ悔やまれる。
そしてゲームをしている2人。白い犬。母親に麦茶を頼む森田。優しい時間。こんなに素敵な時間、殺人鬼になってしまった彼にもあったんですよ。時間は巻き戻せないけど、あの頃まで戻って彼を助けてあげたい。。
この最後を見てしまったら泣かずにはいられません。わたし、可哀そうで泣いてるのか切なくて泣いてるのか分かりません。だっていくらそんな過去があったとしても彼は殺人鬼。同情なんだろうか。。名前をつけることの出来ない涙って出るものなんですね。なんで泣けるのか分からないんですが、
森田の最後には涙が止まりません。森田剛の演技力凄まじいです!
この最後のシーンがあったから、余計に中盤のエグいシーンを恐ろしく思うのかもしれません。
逆に最後のシーンのために中盤のエグさが必要なのかもしれません。どちらにせよ説得力がすごいんです。リアルな恐怖を植え付けられ、苦しいほどに悲しくなります。





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麦茶をお願いするセリフで泣くことなんて初めてでした(笑)今後、こんな機会ないと思います。
でもこれはかなりキーワードですよね!
この一言には平穏に生きていくことの幸せさや有り難さが詰まっている気がしました。
心優しい少年だったからこそ、、そんな彼を全くの別人に変えてしまった環境が憎い。でもその場にわたしがいたとしてもわたしも自らを守るので必死で他人なんて知らん顔してただろうしなあ。
でも!でも!ごめんね、ごめんね森田。助けてあげられなくてごめんね。




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とにかくいろんな感情を一気に体験できる作品だと思います。
殺害シーン等が苦手な方には見るのも辛い作品かもしれませんし、リアルな恐怖を感じるのでしばらくトラウマになるかもしれませんが、多くの人に観てほしいと思います。多くの人に森田の体験した辛さを知ってほしいです。最後のシーンを観て何を感じるかはそれぞれ違うと思いますが、心動かされる何かがあると思います。
私も観てから2日ほど経ちましたが、まだ感情がぐちゃぐちゃしてます。名前をつけることができないなにかが渦巻いて、怖い気持ちと悲しい気持ちと切ない気持ちで苦しいです。
でも観てよかったと、森田という人間を知れて良かったと思います。最後のシーンは本当に、言い表すことのできない気持ちを運んできます。
この作品に出会えてよかったです。
ヒメアノ〜ルという複雑な作品の感想は簡単に手短に書くことができませんでした(笑)
ここまで長々と書いてしまったのも作品の力だと思います。